授業における指示の与え方 | 授業の基本シリーズNo.1
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授業中の生徒に対する指示伝達は想像以上に困難を極めます。

はじめに

高等学校は、高校入試の関門を通り抜けないといけないため、推薦入試を利用する生徒以外は、基本的に学力によって振り分けられることになります。

従って、高等学校向けの教育書を出版しても、多岐にわたるニーズを満たせないので、教育関係の書籍は、小中学校向けのものが多くなっているのが現実です。

また、進学校などの生徒だと、精神的には大人と言ってよい段階まで成長していることもあり、学級崩壊など、教員にとって危機的状況に陥ることはありません。

しかし、もしも生徒たちの学習意欲が低い高等学校へ赴任してしまったら、その時は、小学校、中学校の教師と同様に、特別な配慮を講じた授業を展開していかないといけません。

このシリーズでは、

そのような学校に勤務されている先生方やこれから教職を目指す大学生向けに、

そして、私自身が今までの教員生活で積み重ねてきた経験と成長を確認するために、

一定のノウハウをまとめていきます。

今回、記念すべき第1回目は「指示を出すということ」について

お伝えしていきます。

 

授業の基本シリーズNo.1というのは、

私がかつて授業で使用した資料のNo.1の数字に対応しております。

(記事の後半で授業資料がダウンロード出来ます。)

 

ここでは、授業の第1回目ということで、

授業を始めるにあたってのルール確認とその準備が中心となります。

 

私の授業は、自作のプリントを配布して進める形態をとっているので、

まずその準備としてファイルを配布して

所定の場所に科目名と名前を書かせるという作業を行います。
IMG_0349_R

この場面における、生徒たちへの指示の与え方には、

よく注意しないといけません。

生徒たちの実態把握

学習意欲の低い生徒が集まる学校では、少なからず学力面や性格面において、

特別な支援を要する生徒が含まれています。

特別な支援を要するというのは、ストレートに表現をすると

「発達障害を抱えている」ということです。



このような生徒たちは、

特別支援学校で行われる支援が必要なわけではありませんが、

集団生活において困難な状況に陥ってしまうことが往々にしてあります。

我々教師たちはグレーゾーン(の生徒)という言い方をします。

通常の指示伝達に潜む問題点

 

ここで本題に戻って、授業者が生徒たちに対して、

ファイルに教科名と名前を書かせる指示を与えるときに、

次のように言うとします。

それでは、今、配布されたファイルの表面の上に、まず科目名・化学基礎と書き、その下に自分の学年、クラス、出席番号、氏名を記入してください。

 

伝える内容は、これで良いと思いますが、指示としてはこれではいけません。
恥ずかしながら、20代の頃の私は、このような指示しか出せませんでした。
この指示の与え方には、大きく2つの問題があります。
まず一つ目に、
ファイルの表面とは、どこなのか?

ということです。

授業者としては、次のような理想像を頭に描いて指示を出しています。
IMG_0352_R

ここには、確かにファイルの表面に、

科目名から氏名まできちんと記入されていますが、

これから実際に生徒たちが書くファイルは、

このような状態になっています。

IMG_0350_R

表と言われても、左側か右側かの判別がつきません。

さらに今の段階では、上下の判別もつかない状態になっています。

 

従って、先ほどの指示だと、生徒たちは、

少なくとも上下左右ばらばらの4通りの表記を行ってしまうことになります。

 

たかが、名前の記入くらいで、

そんなに神経質にならなくても良いのかもしれませんが、

今後、(私の授業では)成績評価においては、

ファイルチェックを実施し、定期考査の点数に加えて、

平常点という形で、日々の授業の取り組みを評価していきます。

 

名前の位置が生徒によってばらばらだと、

ファイルを開くたびに、プリントを見る向きを変えるという

無駄な作業が加わるので、

ここはある程度きちんとしておきたいところです。

そもそも、たかが、名前の記入くらいの指示が伝わらなかったという事実は、
今後生徒たちに高度な指示伝達を行う上で、危機的な状況です。
そして、二つ目の問題として、
指示内容が多すぎるということ
が挙げられます。

授業者の指示を聴く側に立って考えた時に、

若かれし頃の自分だったら、

この程度の指示内容は全て聴き取れたかもしれませんが、

加齢とともに注意力や記憶力が減退した

今の私には、この指示を完全に聴き取って実行できる自信がありません。

 

目の前にいる生徒の数は、30~40名です。

全ての生徒が、パーフェクトに指示内容を理解できる確率はとても低く、

この指示を聴いて、全員が正確に行動できると思うことの方が愚かなことです。

 

指示伝達の技術

向山 洋一先生の著書 授業の腕をあげる法則

の中に次のような10か条が与えられています。

授業の腕をあげる法則 (教育新書 1)
向山 洋一
明治図書出版
1985-06-01

 

■授業の腕をあげる法則 10か条
第1条 趣意説明の原則
第2条 1時1事の原則
第3条 簡明の原則
第4条 全員の原則
第5条 所持物の原則
第6条 細分化の原則
第7条 空白禁止の原則
第8条 確認の原則
第9条 個別評定の原則
第10条 激励の原則

※詳細は上記の書籍をご確認ください。

この10か条を意識する(知っている)だけでも教師力に大きな差が出ます。

この二つ目の問題に関わる原則として、「1時1事の原則」があります。

これは、

いっとき(1時)にひとつのこと(1事)をさせることを基本にせよ!

という原則ですが、

今回の指示は、

 ①ファイルの表面を確認する。
 ②上に科目名を書く。
 ③下に学年・クラス・出席番号・氏名を書く。

という風に、

1つの指示で少なくとも3つの事を生徒たちにさせよう

としています。

 

上記のような理由によって、

ほぼ100%生徒たちには、正確な指示は伝わりません。

これを以て、生徒たちが私の言うことを聴かないと叱責してはいけません。

 

正しい指示伝達の例

 

これが完璧なのかどうかはわかりませんが、

私であれば次のような手順で指示を与えていきます。

1.配布されたファイルのプラスチックの部分が右側にくるようにする。
2.この状態から厚紙を右側に折り曲げるように伝える。
(教卓の前の方で授業者は、視覚的に理解できるようファイルを提示しながら、説明を進めて行く。)

IMG_0349_R

3.この時の右側の面がファイルの表面であると伝える。
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これで、ファイルの表面が確認できたので、

後は、順に、科目名、学年・クラス・出席番号・氏名と

黒板に記入例を板書して

所定の場所に記入するように指示を与えます。

 

私は、これに加えて背表紙にも、

科目名とクラス・出席番号を記入させるようにしていました。
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こうしておくと、ファイルを回収した後の、管理が容易になります。

このような配慮を行うと99%の生徒は、

正しい位置に記入することが出来るようになります。

 

残り1%の生徒は、欠席しており、日を改めて記入した生徒です。

そのような生徒に対して油断をして、

後でファイルに誰々さんのように、書いておいてねと伝えるだけだと、

往々にして上下左右いずれかが逆さまの状態になっています。

 

ただファイルに数行記入するだけのことですが、

それなりの配慮を要する時があります。

 

これだけ見ても、教育の世界というのは、

奥が深いと思えるのではないでしょうか・・・。

 

授業の技術シリーズ(続き)はこちらのガイドを活用ください。

授業資料のダウンロードはこちら↓↓↓

授業資料集

実際の授業で利用した全データについてはこちらを参照ください。
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