■はじめに
このような組織においては、選手は指導者に逆らうどころか、前向きな意見すら言うことが出来ません。指導者に対して何かしらの進言を行う時は、よほどチーム内に不満が蔓延していて、このままではいけないと進退をかけて誰かが勇気を振り絞り、個人もしくは集団で行動に移さないといけません。例えば、大学受験を目指す高校3年生の選手が放課後の課外に参加したいので、練習開始時間を1時間遅らせてくださいと、傍から見れば、たわいもないお願いであっても、相当の覚悟が求められます。
それどころか、指導者は何よりもまず勝利を優先していることを選手である生徒は理解しているので、この程度のお願いでさえ、
「チームの事よりも自分の進路を優先する自己中心的で無責任な奴はけしからん。」
と、叱責を受けることを予測して、選手は自分自身の将来を犠牲にしてチームの将来を優先します。そして、選手の可能性は潰されていき、選手には今現在従事しているクラブ活動しか見えなくなっていきます。自分にはこれしかないと・・・・。そのようなチームは、一見すると確かにスポーツに対してひたむきに取り組んでいるように見えますが、健全なチーム体制を組織できているかと言えば、私はそうは思いません。
指導者の権威がはびこる組織においては、指導者の機嫌を損ねてはいけません。隣の学校での練習試合に負けようものなら、怒り狂った指導者は、罰として自分の学校まで走って帰ることを命じたり、もしくは指導者の機嫌を少しでも収めようと、選手たち自らが、
「自分たちの鍛錬が足りなかった。これからもっともっと強くなるためには修練が必要だ。」
という意思を示すために、自ら罰走を選び走り出します。
試合終えて、体内のエネルギー枯渇した状態から、さらに強度の高い運動を行うと、その運動のエネルギーを確保するために、筋肉を分解して体内に循環させますし、疲弊した状態で硬いアスファルトの上を長時間走り続けると膝に過度な負担が集中するので、翌日以降の怪我の原因にもなりかねません。こうして学生たちの選手生命は短縮されていきます。ハードワークを否定するつもりはないですが、何か練習させるにしても、せめてエネルギー補給くらいはさせてあげたいものです。
このような姿を見て、
徐々に怒りを鎮めていくわけです。自身の教養のなさを顧みずに・・・。
上記のような組織においては、当然選手たちのストレスは溜まります。
この溜まったストレスを解消する方法は、私が思いつく範囲では2つあります。
それは、
- 非行に走ること。
- (主に後輩を)いじめること。
1.非行に走る
つらい現実から少しでも身を背けたい。そのような欲求が高まると、生徒たちは飲酒や喫煙に手を染めるのではないでしょうか。ひどい場合は、覚せい剤やシンナーなどの薬物に手を染めることだって十分にあり得ることだと思います。
最近(2018年11月段階)だと、
こうしてまた、部員たちの将来に傷がつきます。
このような事件についても、その後のことが心配です。大会への出場を辞退するということは、勝利を最優先に考える指導者から、勝利を掴み取る機会を奪うことに相当します。
2.後輩をいじめる
ストレスを解消する手段として、1で述べた一時の快楽を味わうことの他に、自分よりも辛い現実に直面する人たちを目の当たりにすることで、自分が受けている仕打ちはまだマシな方だと、わずかな優越感と共に自分自身の境遇を納得させる方法があります。そして、自分よりも辛い現実を目の当たりにするために、上下関係を逆手にとって、先輩は後輩に対して絶対服従を求めます。自分たちが指導者に対して服従しているのと同じように。
これは、自分自身が高校時代に受けてきた仕打ちが如何に現代社会とかけ離れた滑稽なことであるかということを笑いに変えて視聴者に提供しているわけですが、過去の体育会系では、そのような風習が当たり前だったのではないでしょうか。指導者から厳しく当たられる最上級生たちのストレスを発散するための手段として。
ネット環境が存在しない時代を生きた、情報弱者たる後輩選手たちは、善悪の判断すら出来ず、目の前の現実をそんなものだと受け入れて、ただひたすら我慢してきたのでしょう。そして、学年が進み、これが自分たちのチームの伝統だと主張し、その溜まったストレスを新たな後輩たちに対してぶつけていく。もしくは、溜まりかねたストレスの捌け口を求めて非行に走っていく・・・。もはや悪循環です。
注目すべきは、これらの問題は、指導者が直接関与していないということです。
問題が発生するまでの流れを整理すると、
- 指導者による行き過ぎた指導
- 選手たちのストレスが溜まる。
- 選手がいじめ・非行に走る。
- 問題が発覚する。
となり、本質部分の1~2を認識せずに、テレビなどの報道によって世間は3~4だけを知ることになる構図です。
■まとめ
■勝利至上主義者を擁するパワハラ体質のスポーツ組織においては、
- 選手(生徒)は、自己の将来性を犠牲にする選択を余儀なくされる。
- 選手(生徒)は、指導者の機嫌を損ねない行動をとらなければいけない。
- 選手(生徒)は、ストレスの捌け口として非行に走ったり、いじめを行う。
- 組織の問題がクローズアップされても指導者の責任は問われにくい。
全国的に健全な組織体制でスポーツ活動を行っていくためには、周囲で見守る私たちはパワハラ体質に対する深い知識と理解が今後求められます。