■原子・分子の熱運動 | 科学と人間生活(光や熱の科学)No.11
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はじめに

ここでは、東京書籍 改訂 科学と人間生活をベースに講義を進めていきます。

資料のダウンロードはこちらからお願いします。

授業資料にある問題の解答はこちらを確認してください。

※画面をタップすると答えが順番に表示されます。

第3編 光や熱の科学 第2章 熱の性質とその利用 ①熱とは何か A. 原子・分子の熱運動 教科書P127-129

今回は教科書P127~129の範囲を学習します。予め教科書の内容に目を通しておくと、効率よく学習が進められます。

☝本時の目標

1.熱や熱運動とはどのようなものであると考えられてきたかを確認する。
2.ブラウン運動と拡散とは、どのような現象か理解する。
3.物質の熱運動と温度の関係を理解しよう。

1.熱とは何か?

長兄:ラオウ
それでは、今日の講義を始めよう。ここからは、物理分野の熱について主に学習することになる。

三男:ジャギ
熱っていうと、あちちぃ~ってなるやつのことだな。

あぁそうだ。ところでジャギよ。「熱とは一体何か?」と言われたら答えることは出来るか?少し聞き方を変えると、「熱は物質のように形あるものなのかどうか…??」ということだ。

う~ん。そんなこと考えたことがなかったなぁ~。物が燃える様子を見てると、物質の中に炎を放出する物質が潜んでるような気がするけど、でも夏が暖かくて、冬は寒いってのは、太陽に直接触れてるわけじゃないから、そういうのを見ると、何か違う感じがするなぁ。

そうだなぁ。実は、熱は物質なのかどうなのかということについては、長年議論になっていた。現在では、原子や分子などの微粒子の運動を熱運動と言って、「熱」とは、熱運動に関わるものであることがわかっているのだが、19世紀頃までは、熱は、物が燃える原因となる物質として捉えられていた。

古代ギリシャ時代は、世界中の物質は、火・水・風・土の4つの元素から構成されるという考え方が主流だった。

とてもシンプルな世界観だね。

それから1000年以上が経過した18世紀においても、物質が燃える時は、可燃物から燃素(フロギストン)と呼ばれる物質が放出されるという説が支持されていたんだ。

すごく長いんだね。

このような熱の物質説に対して、17世紀頃から異論を唱える科学者が現れた。物理学者のフックやボイル、デカルトがその人だ。デカルトは、「手をこすると暖かくなるのは、手をつくっている微粒子が運動するからだ!」と主張し、物体を構成している微粒子の振動こそ熱にほかならないと考えた。

へぇ~。でも熱の物質説が18世紀まで支持されてたわけだから、当時の人たちにはなかなか受け入れてもらえなかったってことか??

あぁ。こうして、物理学者を中心に熱の運動説が唱えられるようになってきたが、化学者の多くは、熱の物質説を支持していたんだ。

そんな中、イギリス軍で兵器の開発に従事していたラムフォードによって、熱の運動説が実験的に立証されることになる。

ラムフォード…

ラムフォードはミュンヘンの兵器工場で大砲の中ぐり作業を監督しているときに、砲身が短時間で非常に熱くなることに興味をもった。以前から熱の物質説に疑問をいだいていたラムフォードは,この現象を実験に移して,砲身の穴をあける道具を金属の円筒に押しつけて,その円筒を馬の力で回転させたんだ。

摩擦熱を発生させたんだな。

当時、熱の物質説を支持する化学者たちは、熱は空気に含まれる物質から与えられると主張していた。これに対して、ラムフォードは、円筒を水につけても熱は発生し、水が沸騰することを示すことで、熱の物質説を否定した。

当時の人たちは、燃素ってのが空気中に含まれるって考えてたんだぁ…

ラムフォードが熱の運動説を主張してから、熱とエネルギーに関する研究が盛んにおこなわれることになる。
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2.物質(原子・分子)の熱運動に関する実験

1827年イギリスの植物学者のロバート・ブラウンは、花粉に含まれている微粒子を顕微鏡で観察したときに、微粒子が不規則な動きをしている様子を発見した。

これが有名なブラウン運動だね。

この現象がなぜ起きるのかは、長い間わからないままでしたが、1905年に、物理学者のアインシュタインは、運動する分子の不規則な衝突によって引き起こされていると主張したんだ。そして、これはやがて実験的に検証されることになる。

へぇ~。

ブラウン運動は、花粉の微粒子の周りに存在する水分子との衝突によって引き起こされたわけだが、顕微鏡では水分子の存在を肉眼で捉えることができない。だから、花粉の微粒子がひとりでに動いているように見えたわけだ。

言葉の説明だけだとイメージが沸いてこないから動画で理解しておくよ!

このように、どのような物質であっても、物質を構成する原子や分子は絶えず運動している。そして、この運動は温度が高くなると活発になることがわかっている。

ふんふん。

これは、拡散と呼ばれる現象で確認できる。
次の動画を見てもらいたい。

水の中に落としたインクが、水の中全体に自然に広がってるね。

うむ。この現象を拡散と言う。拡散する速さは、温度が高い水の方が大きくなることがわかっている。

ほんとだ、熱湯の方がインクが均等になるのが速いね。

このように、どのような物質であっても、そこに含まれる原子や分子は、その温度に応じた運動を行っている。この運動のことを「熱運動」という。

へぇ~。

現在では、熱とは、物質をつくる原子や分子の運動能力のことを指し、物質的なものではなく、エネルギーの1つの形態であると考えられるようになった。
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問題演習(解答・解説)

教科書や講義の内容を参考に、資料の学習課題に取り組もう。
水中の微粒子は、水分子との衝突によって、不規則に動きます。これをブラウン運動といいます。また、原子や分子の不規則な運動を熱運動といい、熱運動は温度が高い激しくなることがわかっています。したがって、(A)~(C)に入る語句として適切なのは②となります。
ポスターからの微粒子は、水分子との衝突によって激しく動きます。原子や分子など、物質を構成する基本粒子の運動を熱運動といいます。また、(顕微鏡で観察できる大きさの)微粒子が熱運動する粒子に衝突して、不規則に動く運動をブラウン運動と言います。
古代ギリシャ時代から長きに渡って、「熱」は物質的なものとして捉えられてきましたが、現代では「熱」は物質として存在するものではなく、エネルギーの1形態として捉えられています。したがって、③の説明が誤りとなります。
ブラウン運動の観察において、水分子の運動が観察できないのは、水分子の大きさが顕微鏡では確認できないほど小さいためであり、無色透明だからではありません。したがって、答えは④となります。

お疲れ様でした。

今回の学習は、ここまでです。

◎異なる単元の学習は、こちらのガイドを活用ください。

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