高1男子生徒の死亡で県の「いじめ対策審議会」が来月から聞き取りへ
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高1男子生徒の死亡で県の「いじめ対策審議会」が来月から聞き取りへ 三重

始めに、思わぬ事態によってかけがえのない家族を失った遺族の方々には心からお悔やみ申し上げます。

以前、「高1自殺、いじめの可能性 三重県教委が結果公表へ」を考える。において、高校1年生の生徒がいじめを苦に自殺した事件について、私なりの意見をお伝えしましたが、進展がありました。

高1男子生徒の死亡で県の「いじめ対策審議会」が来月から聞き取りへ 三重
12/22(土) 1:36配信 メ〜テレ(名古屋テレビ)

 ことし8月に亡くなった三重県の県立高校1年の男子生徒について県教育委員会の有識者会議が、いじめによる自殺の可能性がなかったか調査することになりました。弁護士や精神科医らで構成される三重県教育委員会の「いじめ対策審議会」は8月に、県立高校1年の男子生徒が死亡した原因について遺族からの要望を受けて、「いじめ防止対策推進法」の「重大事態」として調べることを決めました。来年1月からは、男子生徒の遺族や周囲の生徒らへの聞き取りのほかアンケート調査などを始めるということです。審議会は調査を進め、来年2月から3月ごろに次の会議を開きたいとしています。

私は、この手の報道を目にするといつもうんざりします。

「いまさら調査なのか・・・。」

と。

事件が起こったのは8月です。学校においては事件発生後、何かしらの調査を既に実施しているにも関わらず、再び調査を始めるという訳です。これほど、非効率極まりない対応はあるものかと思ってしまいます。「教員の働き方改革」と題した記事をよく見かけますが、本当に改革しないといけないのは、こういった手続き的な無駄です。

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■「いじめ対策審議会」による聞き取り

前回の記事でもお伝えしましたが、今回の件は、

LINEでのやりとりの中で

心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)

があり、別の高校に通う友人が相談を受けていたということは、

当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じていた

のは明らかであり、この2点からいじめを受けていたと断定出来るはずです。

今回の報道は、いじめを受けたことが原因となって生徒が自殺したのかどうか「いじめ対策審議会」が調査によって判断することになりますが、一体のどのように判断されるのでしょうか。

まず、今回の件におけるいじめ行為がどの程度のものであったかは分かりませんが、それを苦にして自殺するかしないかの選択は、個人差があるように思います。

図太い性格の生徒であれば、多少の暴言などはものともしませんが、

繊細な生徒であれば、ちょっとした冗談であっても深く落ち込み、それが重大事態に結び付くということだってあるでしょう。

「いじめ対策審議会」は、自殺した生徒の性格分析まで行って、この生徒の特性を勘案すれば、加害生徒の行為によって自殺したとするのは適当であるとか、そうでないと判断を下すのでしょうか・・・?

生徒の自殺はいじめが原因ではないと判断した場合、自殺に至った別の原因の特定も含めて行うということでしょうか・・・?

「いじめ対策審議会」における審議が上記に触れる内容を基にするのであれば、この問題が収束した後に、我々教員に対して、いじめの早期発見および未然防止のためのベンチマークとして、是非どのような議論が交わされたのかを情報公開していただきたいものです。(被害生徒名や加害生徒名、学校名などの個人情報を伏せるのは当然のこととして。)

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■この件に関する問題点

今回の件については、

「いじめ防止対策推進法」の「重大事態」として調べる

とあるように、法に則った適切な行動ではあります。

しかし、問題なのは、遺族からの要望を受けて、「いじめ対策審議会」を組織して調査を始めている点です。

文部科学省の いじめ防止対策推進法「重大事態」の解説(案)において、

 1 判断主体
いじめ法28条1項の規定による調査(以下単に「調査」という。)は、「学校の設置者又はその設置する学校」が、重大事態に該当すると「認める」ときに行うものとされている。
したがって、重大事態に該当するか否かを判断するのは、学校の設置者(以下単に「設置者」という。)又は学校である。

とあります。今回の件は、「遺族からの要望を受けて」とあるので、重大事態に該当すると判断したのは、学校の設置者つまり三重県教育委員会になります。

限られた情報による憶測になってしまいますが、今回の件について遺族は、生徒が通っていた学校に対して調査の依頼を行っていたが、加害生徒との面会の場を調整してもらえないなど、学校側の対応に不服だったために教育委員会に調査の依頼を申し立てたのだと思います。

8月に起きた事件の調査が1月になって始まるというのは、上記のような背景が少なからず潜んでいたものと考えられます。私の目の錯覚であってほしいのですが、今回の件については、私には上記のような背景が透けて見えてしまうため、冒頭でもお伝えした通りうんざりする訳です。

不謹慎な物言いになりますが、もしかしたら遺族がモンスターペアレントのため、対応が後手に回ってしまうケースが少なからずあります。その可能性を否定はしません。

←詳しくはこちらを参照してください。

前回の記事には、

遺族から8月下旬に連絡を受け、9月初旬にグループLINEに参加していた生徒数人から聞き取り調査を行い、内容を遺族や県教委に報告した。
 遺族は関係生徒と直接会って話したいと学校に申し入れたが、関係生徒の保護者と折り合いがつかなかった

とあります。本来であれば、

遺族から連絡を受けた8月下旬の段階、遅くとも聞き取り調査を行った9月の初旬には重大事態として認定し、調査にあたるべき事案だったはずです。

そして、これについて反省すべきは、学校だけでなく、三重県教育委員会についても同様です。そもそも、

現場よりも客観的かつ冷静に判断できる教育委員会がいじめと自殺の因果関係に疑いを抱き、重大事態と認定すべきだった

と私は思います。

今回の件は、該当の学校及び三重県教育委員会、そして我々教員も、よく反省すべきだと思います。

そして、繰り返しになりますが、何よりも

最優先すべきは、自殺した生徒の遺族に対して誠意を尽くすことです。

私は、一連の記事を通して、学校も教育委員会も遺族に対して誠意を尽くした対応が出来ていると思いません。

それ故に、今度は、加害生徒に対する精神的ケアの必要性まで出てきたのではないでしょうか。悪いことをしたと言っても、善悪の判断がきちんとつけられない10代の若者です。

いじめと自殺の因果関係が確定した後に、学校もしくはその他の機関からの正式な指導が施されると思いますが、それまでの期間、加害生徒たちは、不安と恐怖に向き合いながら学校に通わなくてはなりません。

人命を奪ったものに対する当然の報いだ。

という意見があるかもしれませんが、長引く調査を苦にして、加害生徒までもが命を絶つ結末を誰が望んでいるのでしょうか。

そもそも、

このような過ちを適切に指導する過程を経て、生徒たちは成長していくものです。それが教育の本来あるべき姿であると思います。

該当の学校および三重県教育委員会においては、もう一度教育の原点に立ち返り、誠実な対応を取っていただくことを切に願うばかりです。

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