はじめに
ヨウ素の昇華性については、ヨウ素と食塩の混合物からヨウ素のみを分離して取り出す手法によって示すことが出来ますが、これを授業で行うと危険が伴います。そこで、今回はうがい薬を用いて、物質の状態変化について学ぶと共に、ヨウ素の脂溶性および昇華性を安全に確認します。
うがい薬で指紋の検出
ステンレス製のボールは、プリンタ用紙、クリップ、チャッカマンはホームセンターで購入
ペンチとピンセットは100均で購入
うがい薬とのど飴、燃料用アルコールは薬局で購入
うがい薬はヨウ素が含まれているものを選びます。
のど飴は、ビタミンCが含まれている飴であればOK
アルコールランプはアマゾンで購入
試験管、試験管立て、シャーレ、三脚は業者(ケニス等)より購入
・試験管は目盛り付きの方が便利です。10の目盛りまで入れると伝えるだけで、正確に指示が伝わります。目盛りがないと10mlと言っても、どうやって入れたら良いのか、生徒たちが若干パニックになるので、簡潔に指示伝達できる手段を選択します。
スチール缶は、コーヒーの缶などの上を缶切りで切り抜いたもの10個集めておきます。
■授業資料
■スライド
事前準備
プリンタ用紙を適当な大きさに切り分けます。大きさは大体、長さ10㎝、幅2.5cmです。
40人クラスだと40枚必要です。失敗した時の予備も含めて1クラスあたり50枚準備します。切った用紙は、5枚ずつクリップで止めてまとめておきます。
バケツ1杯分砂を準備します。砂は、どんなものでも大丈夫ですが、海の砂がちょうど良いです。
家で行う場合は砂浴の代わりにホットプレートをでも大丈夫です。
ボールの中に砂を入れます。これを砂浴(サンドバス)として使用します。直火だと、うがい薬を加熱した時にすぐに焦げてしまうので、温度上昇速度を調節する目的で使用します。
砂の量が少なかったので、校舎内の砂利を足してあります。
試験管立てに試験管を3本立てて、1本の試験管にうがい薬を入れます。
必要最低量は、3mlですが余裕を持って多め(10ml)程度にします。2クラス以上で実施する場合は、さらに量を増やしておきます。ヨウ素成分が気化しないように念のために、うがい薬を入れたらラップでフタをしておきます。ケースの中にシャーレ1枚、のど飴、ペンチ、プリンタ用紙、のりを入れます。
のど飴を再利用する場合は、別途シャーレとペンセットが必要です。
各テーブルに、三脚、砂浴、スチール缶を置きます。
授業展開
プリントの配布および語句の記入と本時の説明
プリントの配布が完了したら、重要語句をプリントに記入してもらいます。語句の説明については、細々と行わず実験を通して、原理を説明していきます。
実験1
試験官に水を10ml入れて、その中にうがい薬を1ml加えて薄めます。
うがい薬と水がよく混ざり合っていないかもしれませんが、そのままシャーレに入れると、きちんと混合されるので、試験管振るなどの指示を与える必要はありません。
次に、薄めた液体をシャーレに移し、シャーレの中央にのど飴を置きます。
このあたりでビタミンCの還元作用で、ヨウ素がヨウ化カリウムになって、うがい薬の色が透明になることを伝えます。
実際の反応はこちらの動画をご確認ください。
反応は徐々に進行していくので、シャーレを観察しつつ実験2に移ります。
実験2
三脚の下にアルコールランプをセットして、上には砂浴を置くように伝えます。砂浴の中にはスチール缶を設置します。そして、各グループ順番にチャッカマンでアルコールランプに火をつけていきます。火のもとは、基本的に授業者が行うようにした方がいいです。各グループにチャッカマンを配布すると、火で遊び始める生徒が出てくることがあります。
アルコールランプに火をつけたら約3分間加熱します。
加熱している間に、プリンタ用紙に指紋を付着させるように生徒たちに指示を与えます。
プリンタ用紙の端を親指と人差し指で約1分間摘まみます。
大体1分が経過すると、加熱を始めてから3分以上が経過しているので、スチール缶の中にうがい薬を2ml入れます。
うがい薬を入れると、白い蒸気が発生します。プリンタ用紙の指でつまんだ部分を下にして缶の中に入れて、1分程度この蒸気に当てると、用紙付着した指紋をかたどるように紫色の模様が浮かび上がってきます。
指紋の検出が確認できた用紙は、各自のプリントの所定の場所に糊付けします。
プリンタ用紙に付着したヨウ素は昇華性があるので、次第に気化していきます。数日後、プリンタ用紙の指紋の跡が消えてなくなっているので、この時にヨウ素の性質(昇華性)について説明を与えます。
■片付け
別のクラスで同じ実験を行う場合、飴は軽く水ですすいで洗ってビーカーに回収します。
回収した飴を次のクラスで使用するときは、シャーレに分けて入れておきます。素手で触ると手がベタつくので、実験の際はピンセットを使用します。三脚とスタンドは、そのままテーブルに置いたままにします。スチール缶内部の汚れは、なかなか落ちないのと、中を洗おうとすると缶切りで切断した部分で手を切ってしまう可能性があるので、水で軽くすすいだ後、水を溜めておきます。そうすると、次の実験で使用するときは、ある程度の汚れは落ちてます。
次のクラスで利用する時は、溜めた水を流してから使用します。スチール缶内部の水が蒸発し始める時を、うがい薬を滴下するタイミングの判断基準に利用することができます。
アルコールランプは一度回収して残量チェックして、少なかったら補充しておきます。
クリップはまとめて回収して、次のクラスで利用する分だけ用紙を挟みます。
今回の実験は、指紋の検出が中心となりますが、それだけだと時間を持て余してしまうので、うがい薬とのど飴の反応(実験1)を追加しています。実験1と実験2を実施して、片付けを完了するまでの所要時間が40分程度です。
実際に指紋が検出される様子は、次の動画を確認ください。