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AI vs. 教科書が読めない子どもたち
著:新井 紀子
東洋経済新報社
2018-02-02


において、著者の新井紀子さんは、シンギュラリティ(技術的特異点)が、訪れることはないとしている。

詳しくは、著書を確認していただきたいが、どれだけ性能が向上しても、コンピュータは、根本的には四則演算を元に動く計算機であり、計算機である以上は、人間の知能を超えることはないということである。
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しかし、著書の中で最も新井さんが懸念しているのは、人間、特に日本人の読解力の方で、全国2万5000人を対象に実施した読解力調査において、次のような結果をまとめている。
■全国2万5000人を対象に実施した読解力調査でわかったこと(まとめ)
1.中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない。
2.学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない。
3.進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である。
4.読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い。
5.読解能力値は中学生の間は平均的には向上する。
6.読解能力値は高校では向上していない。
7.読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある。
8.通塾の有無と読解能力値は無関係。
9.読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関がない。

 

上の結果によると、高校生の半数以上が、教科書の記述の意味が理解できておらず、進学校であっても内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度なのである。

 

読解力とは思考力に直結するものであり、今後、コンピュータと人間の差別化を図る重要な要素になってくる。ただ単にマニュアルで表現された行為は、ほぼ全てロボットに置き換わり、人間はマニュアルでは賄えない臨機応変な対応力が求められてくる。

しかし、新井さんの調査結果だと、少なくとも約半数の日本人は、今後の変化に耐えうる素養が定着していないので、これは近い将来深刻な問題となるだろう。

そして、この読解力は物理を学ぶ上でも必須の能力である。

新井さんと同じような調査は、すでにアメリカの方でも行われている。

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図3.2 全米学力調査で使った、中学生用の数学の試験問題より

米国陸軍の兵士輸送用バスは36人乗りです。訓練施設に1128人の兵士をバスで運ぶためには、何台のバスを用意すればよいですか?

正しい答「32」を出したものはたったの23%、「31余り12」という答を出したものは29%、「31」と答えたもの18%。

7割の学生は、1128÷36が31余り12であるところまでは辿り着けているが、現実世界の具体的な状況下で答がどのような意味をもっているのかを判断できるのは、23%だけなのである。それ以外の学生は問題に与えられた数値が、答とどのように関連づけられるかを考えておらず、問題の意味を理解していない。

高校レベルの数学やその他科目であれば、問題のパターン暗記である一定レベルまでは、対処可能であるが、物理に関しては基本レベルから上記のような判断が求められてくる。

自由落下の問題にしても、そもそも地球上でy=1/2gt^2が成立する状況など、まず存在しない。
金属のような重いものと鳥の羽のように軽いものを同時に落としたら分かるように、そこには、空気の抵抗力や浮力が作用しているはずであるが、自由落下の式は、物体には重力しか働かないと考えても結果に支障はないという前提の下で運用している。

上記背景を口頭もしくは教科書の確認や板書のみで説明しても読解力のない学生には正確には伝わらない。
つまり、約半数の高校生はここで脱落することになる。かと言って、前提条件を無視して自由落下の式のみを示して、数学的運用だけに特化させても、いずれ、圧力と浮力を学習する時に壁にぶち当たる。


文章を正確に読み解くことを教えるのは、理科教師の役割ではなく国語科の責任と、ただ物理学を教えることだけに専念しても、正確な知識は定着しない。

自由落下においては、真空状態を含めた物体の落下を経験させたうえで、自由落下の式が適用可能な条件を示すように、物理を正しく伝えるためには、物理法則が適用できる具体的な状況を示しつつ、内容理解を進めることが大切になってくる。

更に定期考査においては、単に数式の運用に留まるだけではなく、物理法則が適用できる条件を直接問うような問題作成が求められる。

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