目次
はじめに
それでは前回に引き続き問題の解説を行います。
□前回の記事
今回は、仕事とエネルギーの関係性にまつわる問題を中心に進めていきます。
仕事とエネルギーの関係
仕事とは「力かける距離」で定義される物理量で、物体に対して与えた労力のようなものです。
一方、エネルギーとは、仕事をする能力を指します。
これから、仕事とエネルギーの関係を見ていくわけですが、
エネルギーには、運動エネルギーと位置エネルギーがあることを学習しました。
運動エネルギーについて
例えば、運動エネルギーというのは、加速度aで等加速度運動している物体が、初速度v0で動いていたとします。
距離x移動したときに速度がvに変化したとすると、等加速度運動の式によって、v2-v02=2axと
表すことができます。
この式の両辺にmをかけて、さらに2分の1をかけると右辺は仕事Fxという表記に変化します。
そこで左辺の1/2mv2という表記に対して、運動エネルギーという名称を与えることで、
この式を「仕事と運動エネルギーの関係」式として、
これから仕事と運動エネルギーの関係を考えていこう!
物体の運動能力が変化したのは、物体が仕事をされたからである。
という風に、
原因と結果の関係、つまり因果関係を示す式として物体の運動を考えていこう!!
ということでした。
位置エネルギーについて
一方、位置エネルギーについては、重力によるものとばねの弾性力によるものを考えました。
重力による位置エネルギーについては、
物体をmgに逆らって、h持ち上げるという仕事をすると、U=mghという落下能力を持った!!
mghという仕事をしたから、それだけ下に落ちる能力を獲得した。
そして、弾性力についてはグラフを用いて、ばねに対してした仕事を求めてから、最終的にばねの弾性エネルギーは1/2kx2であるということを見ていきました。
そのようなことを踏まえながら、これから実際に問題を解いていきます。
問題解説
問題6
手によってなされた仕事を求める問題ですが、手が加えた力の大きさがわからないので、質量mの物体にはたらく力をまず整理します。
すると、物体には、重力と垂直抗力。摩擦力と弾性力。
そして、手が引く力の5つの力があることがわかります。
手が引く力をFとしておきます。
この内、問題文に与えられているのは、m, k, x, μ’ g だけですので、それ以外の数値については、問題を解きながら考えていきます。
問題文にある通り、
この物体をゆっくりと引き伸ばす…
とあるので、進行方向の力のつり合いを保ったまま引き伸ばすと考えると…
手が引く力の大きさは、摩擦力と弾性力の大きさに等しい
と、できます。
したがって…
仕事Wは、Nはmgとつり合っているからmgとして、Fかけるxを計算したら良いということで、(kx+μ'N)xだ!!
としてしまいがちなのですが、それは誤りなので注意してください。
W=Fxとして良いのは、Fが一定の力である場合です。
ここでのFは、kx+μ’mg です。
動摩擦係数と重力は一定の値だから、μ’mgは一定ですが、ばねの弾性力kxは、ばねが伸びれば伸びるほど、力は大きくなります。
つまり一定の値ではないということです。
したがって、W=Fx ではWは求められません。
そこで、仕事とエネルギーの関係でやったことを思い出してみます。
ばねの弾性力による位置エネルギーを求めるために、グラフを書いて、面積分に相当する仕事がばねにはたらいたから、その結果、ばねは弾性エネルギーを持った。
このようなことをやりました。
ここでも同じ事をやってみます。
物体を、kx+μ’mgという力でゆっくりとxだけ引っ張りました。
すると、こんなグラフになります。
最初ばねは自然長だったから、弾性力は0。
したがって、Fはμ’mgから始まって、x伸びたところでkx+μ’mgという力になった。
このグラフの面積を求めると、台形の面積は上底+下底×高さ÷2ですから…
仕事Wは、1/2kx2 +μ’mgx となります。
問題7
これは、仕事と運動エネルギーの関係をそのまま問う問題です。
運動エネルギーがv0からv に変化した…。
この時の速さvは、v=…の式に変形すると、次のようになります。
問題8
(1)解説
こちらは、問題6と同じ考え方で行きます。
グラフの面積が力Fのした仕事になります。
したがって、0mからx1[m]までの仕事、W1はF1x1となります。
(2)解説
これは問題7と同じように考えていきます。
仕事と運動エネルギーの関係より、0[m]からx1[m]までの間に物体はW1の仕事を受けた結果、運動エネルギーが1/2mv02から、1/2mv12に変化します。
次の式より、v1を計算すると、次のようになります。
(3)解説
こちらもグラフの面積を求めるだけです。
そうすると、x1からx2までは、この三角形の面積(上図赤色部分)を求めたらいいので、
W2=1/2F1(x2-x1)[J]となります。
(4)解説
(2)の問題と同じように、仕事と運動エネルギーの関係を考えると、
x1[m]からx2[m]までの間に物体はW2の仕事を受けた結果、運動エネルギーが1/2mv12から、1/2mv22に変化した。
ということで、このような式になります。
これよりv2を求めると、次のようになります。
それでは最後の問題です。
問題9
(1)解説
(1)番から順番にみていきます。
まずは、運動エネルギーです。
運動エネルギー1/2mv2の表記をもつ物理量です。
そして、今回は物体が自由落下するわけですから最初の速度は0です。
そして、重力加速度をgとすると、ある時刻tでの速度vは等加速度運動の式よりv=gtと書けます。
これをK=1/2mv2の式に代入すると、K=1/2mg2t2とかけるので、運動エネルギーKは時間tの2次関数の式になっています。
この式は下に凸な概形をしたグラフでt=0のときK=0ですから、ア~エは、まず選択肢から外れます。
残りのオ~キの中で最適なグラフを選ぶと、キが運動エネルギーKのグラフということになります。
(2)解説
次に、(2)番、 重力による位置エネルギーUです。
Uは、地面を基準とした時、「重力×基準点からの高さ」で表現される物理量ですから、
最初t=0の時には高さhの地点にいたとすると、この時の位置エネルギーはmghです。
そして、自由落下することによって、どんどん高さが0になっていくわけですが、ある時刻tにおける変位(位置の変化量)は、-1/2gt2 と書けます。
時刻tにおける高さをyとすると、y=h-1/2gt2 と書けます。
したがって、ある時刻tにおける位置エネルギーを、重力mg×基準点からの高さyで表すと、
U=mg×(h-1/2gt2) と書けます。
この式より、重力による位置エネルギーUは、tの2次関数であることがわかります。
ただし、今回は上に凸なグラフの概形になります。
従って、最適なグラフはイかオのいずれかになります。
そして、この式はt=0の時に最大値となるグラフなので、イが重力による位置エネルギーUのグラフとなります。
(3)解説
そして、最後に力学的エネルギーEです。
力学的エネルギーとは、運動エネルギーと位置エネルギーの和のことです。
つまり、E=K+U で表される物理量です。
そこで、(1)番、(2)番で求めたKとUを代入すると、
E=mghとなります。
この式をよく見ると、mは定数、gは重力加速度9.8、つまり定数。hは最初の高さで定数。
全部定数です!
Eの式には変数が含まれていないので、どんな時間であってもEはmghです。
したがって、ア~キより最適なグラフを選択すると、アということになります。
Eが一定の値になることを力学的エネルギーが保存されると言いますが、この辺りの問題については、次回の問題解説で行う予定です。
それでは今回は以上となります。