高校物理の授業実践モデルの提案(後編)
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高校物理の授業づくりを提案する(前編)

の続きとして、今回は、

「気体中にある物体にも浮力がはたらくことを経験してもらう。」

ための具体的な授業づくりの進め方についてお伝えする。

3.具体的な授業内容(案)

生徒に対して行うべき授業展開の方針が定まったところで、 「気体中にある物体にも浮力がはたらく」という事実を生徒たちが目の当たりに出来る教材を吟味する。

設定した目標が達成できるのであればどんな教材を利用しても構わないが、今まで私が利用してきた教材の中で、上記に該当するものには、ヘリウムガスの利用と熱気球(※)がある。従って、これらを利用する方向で授業展開を計画する。

※熱気球参考URL:https://naniomo.com/archives/9086

ヘリウムガスの密度(約0.18kg/m3)は空気の密度(約1.3kg/m3)よりも遙かに小さいため、風船の中にヘリウムガスを充填すると、空気から受ける浮力よりも風船全体にはたらく重力の方が小さくなり、風船は空気中を浮かび上がる。

ヘリウムガスで風船を膨らませるだけなら、教室でも可能なので、大掛かりな準備を必要としない点では、とても便利な視覚教材として活用できる。これによって、「気体中にある物体にも浮力がはたらく」事実を生徒たちに直視させることが出来る。

しかし、ここで油断してはいけない。確かに、ヘリウムガス入りの風船は宙に浮かびはしたが、そもそもヘリウムは生徒たちの身近に存在する物質ではない。従って、ヘリウムガスという浮遊性の物質が存在し、その浮遊能力によって物体が宙を舞ったと考える生徒がいる可能性がある。このような穿った考え方をしなくても、今回風船が宙に浮いたのは、その中にヘリウムガスが注入されたことが原因であると判断し、原因の主体となるべき空気に意識が向かわない可能性がある。

そこでダメ押しする意味でも、熱気球を製作してみる。

黒いビニールの中に満たされた空気が太陽の熱によって暖められ、膨張し密度が減少する。外の空気の密度と中の空気の密度の差が、ある一定値を超えると、気球が外の空気から受ける浮力は、内部の空気を含む気球にはたらく重力を上回り、気球は宙を舞う。

熱気球については、日常生活で長年慣れ親しんだ空気を素材として、黒い物体は光のエネルギーを吸収しやすい特徴を利用することで、空気(気体)から受ける浮力の大きさ物体(気球)が受ける重力の大きさを上回る状況を作り出している。空気の密度をコントロールする部分については、きちんとした説明を与える必要はあるが、

これによって、

「気体中にある物体にも浮力がはたらく」

という事実を生徒たちは受け止めて、液体・気体を流体という分類に含めることでようやく、大気圧が物体に与える力についての正しい理解へと導くことができる。

以上、高校物理の授業づくりの方向性について論じた。今までの内容を50分の授業計画に反映していくことになる。(当然というかおそらく、上記の内容は1回50分の授業のみに収まらないので何回かに分けて実践することになるであろう。)

 

実際に授業を行う場合には、他に注意すべき重要な点がある。それは、教師が結論を示して説明を与えるのではなく、正しい理解は生徒たち自身の力で導き出すということである。生徒たちの誤った認識の矛盾点を明確に提示し、正しい理解へと導く教材を活用し、正確な理解を得るきっかけを与えて行くのである。

このように教師の一方的な説明をインプットさせるのではなく、授業時間において、得られた新たな学びを自力でアウトプットする過程において、生徒たちの思考力は鍛えられる。

指導者とは、指して・導く・者 と書く。

それは、「学生たちが目指すべき方角を指し示し」、「学生たちの力によって」、「ゴールへ導いていく者」と解釈出来る。学生たちにただひたすら知識のインプットを強要する者は指導者とは言わないのである。指導者として学生たちを導く技術は、確かに存在し、それは授業を進める上でなくてはならない、重要かつ高度なスキルであるが、それはまた別の機会に議論することにする。

結論を急がれる方は、こちらの書籍を参考にしてください。

 

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